麻倉怜士もノックアウト!音源の持つ音楽性を色濃く引き出す“オーディオ専用ルーター”「DATA ISO BOX」徹底レビュー
オーディオ処理のみに特化させる“ネットワーク・セパレーター” ハイレゾストリーミングへの音質対策はこれまではネットワーク経由、もしくは電源経由、外乱、内乱……などから発生するノイズをいかに減少させるかが主眼だった。そうしたオーディオ用のハブとケーブル、そして電源……など、 従来からの高音質への視点で欠けていたのが、ルーターだった。そこで、最新の高音質化の武器として、いま大いに注目を集め始めているのが、“オーディオ用ルーター”だ。その代表がトップウイングが設計、開発した「DATA ISO BOX」。 ルーターは複数のネット機器をインターネットに接続するための中継機器。契約に基づき、プロバイダーとインターネット回線を接続し、室内の各機器にIPアドレスを割り当て、ネットからのデータパケットを適切な機器に転送、逆に機器からネットへの橋渡しを行うのが一般のルーターだ。これまではルーターから、こうした措置が入った信号を、オーディオ用のハブやネットワーク機器に、そのまま入力していた。 「それが音質的に大きな問題を引き起こしているのです」と喝破するのは、開発者のトップウイング社長の菅沼洋介氏だ。「ネットワーク機器には、ルーターからさまざまなデータがやって来ます。だからとにかく一度は受信してみて、この信号は自身が対象かそうでないかを判別しなければなりません。 その過程で一定の処理が発生し、CPU負荷が高まり、本来は音処理に使われるべきリソースが不要事に割かれるのです。DATA ISO BOXは、IoT家電機器による“呼びかけ”(特定の宛先にデータを送信)、通知、探索、認証……などのオーディオに余計な動作や信号をシャットアウトし、ハブには送りません。ハブ以降のネットワーク機器は邪魔な信号が来ないので、必要なオーディオ信号の処理に集中できるのです」。 なるほど。とても分かりやすい解説だ。となると、これは「ルーター」と言ってはミスリードだろう。ルーターは前述のようにたくさんの仕事をさばくネットワークの司令塔。DATA ISO BOXはそこから、オーディオに必要な信号のみを抽出する役割を持つ。正しくは「ルーター」ではなく、ネットワーク・セパレーターだ。
一音一音の中味が充実し、音の粒子が細かくなる では、DATA ISO BOX+OPT APはどんな効果を聴かせてくれるのか。ファースト・インプレッションを述べると、「こんな手があったのか! と驚いた」である。 結論から初めに述べると、「有り」と「無し」ではこれほど違うのかにノックアウトされた。具体的には透明感が圧倒的に向上し、フォーカスが格段に鋭く、音像のエッジがシャープになった。このことは冒頭のアコースティック・ベースのF→D→G→Cというピッチカート進行を聴くだけで、分かる。「無し」に比べ、一音一音の中味が充実し、そこに詰まった音の粒子が断然細かく、音階感も明瞭に、音の体積感が高密度に、音の核がリジッドになった。 でも、もっとも刮目は情家みえのヴォーカルだ。声にキレと輪郭感とヴィヴットさが加わり、言葉のニュアンスをとても大切にしている細やかな歌い方が伝わってくる。歌詞に込めた感情が聴け、音の飛翔の速さ、音の屈託のなさ、輝度感の高さは耳の快感だ。
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